ミサイルの飛んだ朝


今朝、iPhoneから聞いたことのない凄い音がして起こされた。
とっさにサイドのサイレントのスイッチを倒してみるが、音は鳴りやまない。
緊急速報の音量はデカいのだ。

また地震か津波だろうと思って一応画面を覗き込んでみると、「北朝鮮からミサイルが発射」とか書いてある。
「は?」とか思いながらよく見ると、「沖縄県」とも書いてある。

半分寝ぼけながらも心臓がドキドキしてきて、
「ミサイルが来るのかー、もしかしたら死んじゃうんだろうか」 と、不安になる。
でもだからといって慌てることもしない。なにもできることはないからだ。

私はもう何年もニュースの類を見ていない。テレビでニュースは見ないのだ。
ニュースが始まればチャンネルを変えるなどして逃げている。
どうせ本当のことは言わないし、ネガティブな情報ばかりだし、そのほとんどは知ったところで意味がない。
だから、発射予告に関する報道は知らなかったので、まさに寝耳に水だったのである。

私は2006年にスキーで転んで半身不随になりかけた。実際に頸から下が動かなくなって、一生このままかもしれないと医者に告げられた時には死を覚悟した。カラダが動かないなら生きていても仕方ないと思ったのだ。
当時は渋谷に住んでいて、収入もそれなりにあった。いわゆる仕事人間だった。
だが、ベッドの上で「首だけ」になってしまうと、家も仕事もお金も完全に無意味になった。
そして思ったのは、「もっとバイクに乗りたい」「もっと色んなところへ行きたい」「もっと好きなことをしておけば良かった」という様なこと。
何よりも仕事が優先の人生だったが、いざとなると、そこには後悔しかなかった。
この感覚は実際に体験してみないと、本当には、分からないかもしれない。

それから奇跡的に復活した私の破天荒振りは知っての通りで、仕事はあまりしなくなったし、変なところへ引っ越してみたり、やりたい放題になった。またいつあのベッドの上に引きずり戻されるか分からない。それならばやりたいことを全てやっておこうと考えたのだ。

で、あれから10年。
今朝の緊急速報を眺めながら思ったのは、「まあいい人生だったなあ」 ということ。
「死んじゃうのかもしれない」と思いながら、「ああ、楽しかった」 と思えたわけだ。

6分後、また緊急速報のけたたましい音が鳴る。
「上空をミサイルが通過」。
ホッと一安心。

ベッドから抜け出て窓際に立つと、空と海が青い。
10年のあいだに収入も家賃もずいぶん下がってしまったが、景色だけは贅沢だ。
さて、もう少し寝るとしよう。

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Category: DIARY

ikeura

バイク乗りです。犬でいうと6歳くらいです。愛車は2003年式ロードキング。東京のIT企業を経営していますが、リアル ノマドワーカーなので夏は福岡、冬は沖縄に住んでいます。バイク雑誌に連載アリ。ツーリング、キャンプが大好き。釣りは100キロ超級のクロマグロだけを追いかけています。動画も撮るので宜しければチャンネル登録もお願いします。

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