みなさんお久しぶりです。DAVID 代表の仮屋 賢二です。
xxxさん、その後ハーレーの調子はいかがですか?
ご依頼いただいたギアカムについてのレポートです。
まずはギヤカムの仕組みについてからお話ししましょう。
4サイクルエンジンには、吸気と排気をコントロールするために、カムシャフトが付いております。
クランクシャフトの回転の1/2の割合の回転でカムは回っていますが、そのクランクシャフトからの駆動をどのようにしてカムに伝えるか?
それには色々な方法があります。
1. チェーン駆動
ツインカムエンジンがこの方式です。
長所としましては、丈夫で長持ち。10万キロも楽々持ちます。コストが安いです。
OHV, OHC, DOHC 各タイプでスタンダードに使用される、もっとも普及しているタイプともいえます。
短所としましては、重量が重い、作動音がやかましい、シューやテンショナーが磨耗する。
高回転時のアクセル、オン、オフによるバルブタイミングのずれ、チェーンテンテョナーによる摩擦抵抗。
チェーンの伸びによるバルブタイミングのズレ。
テンショナーによる力のベアリングへの負担などがあります。
2. コクドベルト駆動
強化ゴムにケブラーなどの強い繊維をはさみ、作られている歯型のベルトによって駆動されるシステムです。
長所としましては、重量が軽く作動音も大変静かです。10年ほど前まではほぼ全ての国産車はコクドベルトのよる駆動と言っても過言ではないくらい普及していました。コストが安いです。
短所は10万キロでの定期交換。そうです耐久性が悪いのです。(今の車は10万キロなんて楽勝です。サイレントチェーンの開発などに押され、今では採用している車は少なくなりましたね。)
オイル付着によるベルトの歯とび、ベルトの伸びによるバルブタイミングのズレ、などが上げられます。
3. ギヤ駆動
これが今回のメインテーマの駆動方式、いわゆるギアカムになります。
長所としましては、正確な作動、高回転、アクセルのオン・オフにも完璧に追従します。
フリクションロスの軽減、テンシュナーが無くギヤの摩擦以外の抵抗がないためにレスポンスの向上、アイドリングの安定、燃費向上、ハイチューンによる高回転化ができます。
短所としましては、コストが非常に高い。
正確なバックラッシュ(ギヤの遊び)で駆動しなければならない為にギヤ製作にコストが掛かってしまいます。
作動音がうるさい。ヒューン、カラカラ、コロコロなどの音が出ます。
一般市販車でギヤ駆動しているエンジンはエヴォ以前のVツイン&スポーツスター、車ではハイチューン用のチューニングパーツしか見たことがないですね。
4. その他の駆動
べベルギヤ(ドカッティ)などがあります。
ツインカムエンジンについて
99年からのビックツイン、ツインカム88 & 96 は、全てカムがチェーンによる駆動をしています。
クランクからの駆動がリヤカムシャフトにチェーンで伝わり(その時に1/2に減速されます)、リヤカムからフロントカムにまたチェーンによって駆動されます。合計2本のチェーンと4枚のスプロケットで構成されています。
各チェーンには、遊びをなくすためにチェーンテンショナーと呼ばれる物が使われています。
チェーンテンショナーは非常に硬く磨耗しにくい材質で出来ておりますが、非常に強いスプリングの力でチェーンに押し付けられて遊びをなくしておりますから、少しずつ磨耗して減っていきます。
その磨耗したカスがオイルポンプに入り、ポンプまで徐々に痛めてしまいます。
通常使用で5万から6万キロで交換しなければなりません。
交換しないとどうなるか?
徐々にメカノイズが大きくなり(ジィージィー、ジャージャーという感じの音です)から、ギリギリとかギィーギィーと大きな音に変化し、最悪はカムチェーンを痛め、オイルポンプ破壊、油圧低下、ベアリング破損、最終的にはエンジンブローとなります。
なお、TC96 からはチェーンテンショナーのテンションを強力すぎるスプリングを止めて、油圧による制御に変更になりました。
ハーレーダビットソン社もスプリングテンショナーによる不具合を把握していたということですね。
この煩わしいテンテョナー交換から逃れるために生まれたシステムが、ギヤドライブカムです。
ギヤドライブカムの長所
1. クランクからの一次側、カム同士の二次側、すべてがギヤドライブになり、作用角、リフト量の制限がなくなります(機械的限度はあります)。
2. フリクションロス(摩擦抵抗)が激減します。
3. テンショナーが無いため、ベアリングへの負担が軽減(トラブルが減ります)します。
4. テンショナーのシューも無いため、オイルポンプへの異物の侵入がなくなります。
この様にメリットはたくさんあります。
ギヤドライブカムの短所
1. ギヤの作動音(カラカラ、コロコロなど)がします。当たりが付けば気にならないレベルまで収まります。
2. コストが高い。
などになります。
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結論としまして、長く TC88, TC96 と付き合って何時でも何処での絶好調で走りたいのであれば、カムギヤ化は必須事項だと私は感じます。
大きなメーカーがコスト削減の生き残り戦争の中で、ギリギリの線で生産しているのが良く分かります。
最近 TC96 をばらす機会が増えてきましたが特に思います。
油圧になっても安心はまったくできません。
お勧め交換時期は 4万〜5万キロで、テンショナーの限界が来る前にギヤカムに交換。
その時にオイルポンプをハイボリューム、ハイプレッシャーのものにアップグレード。
ブリーザーバルブも装着してキャブレターからの吹き返し対策もしましょう。
参考価格
価格は消費税込み。エンジン仕様により価格は変動しますので予めご了承ください。
アンドリュース・ギヤカム | 44,600円〜50,400円 |
S&S ギヤカム用4ギヤセット | 63,570円 |
ギヤカム・インストールキット | 5,292円 |
Fuling スーパーオイルポンプ | 65,000円 |
S&S ブリーザーバルブ | 16,800円 |
ガスケット一式 | 9,800円 |
エンジンオイル | 2,320円 |
カム、オイルポンプ交換、エンジン分解、洗浄、組立、調整一式 | 63,000円 |
パワー不足を感じる方は、さらにボアアップ、ストロークアップをしましょう。
ボアアップ、ストロークアップをすると耐久性が落ちる、乗りにくい、すぐに壊れる…。
これらはすべて本当であり、嘘でもあります。
これらはエンジンチューナーの腕の見せ所なのです。
耐久性を落とすことなく、乗り易く、乗っていて楽しくなるエンジンを製作してオーナーに喜んで頂く、
これが 私 DAVID の使命だと感じ日々努力しております。
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