慢心

バイクに乗るとき、私はグローブもしないしレザーも着ない。ヘルメットは装飾用だ。

理由は簡単。頸に爆弾をかかえていて、次転んだら車椅子と宣言されているから。
カラダが動かなくなってしまうなら、カラダを傷つかないようにする必要もないし、手を守っても意味がないし、頭なんて割れてしまっても構わない。何を身勝手なことを言っているんだと思うだろうか。でもこの気持ちは、実際に首から下が動かなくなって、その恐怖を味わった人にしか分かりっこない。
その代わり人一倍安全運転をしている。このコーナーの先に何か落ちていても止まれるように。あの角から子供が飛び出してきても平気なように。信号で止まれば、後ろから突っ込んでくるクルマがいないか必ずチェックする。

 ***

ここ最近は健康にはまったく問題がない。
毎週何十キロも走っているし、ジム通いの甲斐あってカラダも結構引き締まってきた。
大きな衝撃はまずいけれど、普通に生活する分には首の怪我は問題ない。
もしかしたら、もうすっかり直っているんじゃないかとすら思ってしまう。

ところが夏の初め、腰を痛めてしまった。ちょっとトレーニングの度が過ぎてしまったようだった。今だから打ち明けると、楽しみにしていたラブピーに行けなかった理由はこれだ。
結局、痛めたのは骨周りではなくて筋肉だったのでストレッチを繰り返すことによって回復してきた。
ストレッチを始めたら腰痛が治っただけではなく、走るのがとても楽になった。すげー、ストレッチ。楽しい、ストレッチ。
腰周りのストレッチを続けていたらいろいろと調子が良くなってきたので、調子になってストレッチの本を買ってみた。で、ページの最初から順番にやってみる。肩、首、腰、足。

そうしたら、左肩が痛くなってしまった。
ああ、ストレッチやりすぎたのかな。しばらく経てば直るだろうな。そう思っていたけれど、なかなか直らなかった。そのうち痛いところが動き始めた。肩が痛い日、腕が痛い日、肘が痛い日。そして痺れが続く。
あ、これは肩が痛いんじゃない。首の神経が圧迫されて痛みが出ているんだ。頸をやってしまったあと一年間悩まされたあの感じだ。これは首のストレッチが原因だ。自己診断だけれど間違いはない。


頚椎


信頼すべき先生に相談してみると衝撃の言葉。
「首に関しては、健常者用のストレッチをやってはダメです」

ガーン。健常者ではなかったのか、オレ...。
そりゃそうだ。頚椎損傷やったんだった。もうちょっとで車椅子だったのが、奇跡の復活をさせてもらったんだった。今まで痛くなかったカラダに痛みを覚えると、気持ちが引き締まる。まあこの痛みと痺れは半年もすれば収まってくるからいいとして、今回のことはなにか意味があるのかもしれない。

***

いろんな事があったから、いま生きていられること、カラダが動くこと、そんな普通の人には普通にしか思えないだろう事が嬉しくて堪らない。
だから、いろんな事に感謝しながら、日々とても楽しく生きている。

「日々とても楽しく生きている」と、言うと、「良く分からないな、そんなの」と、時々言われる。
日々楽しく生きていることが理解できないほど人生ってつらいのか?と不思議になったりするが、そんな時、自分の気持ちを理解してもらうために良くこんな話をする。

「例えばガンで余命半年を宣告されるでしょ?そうするとやりたいこと、やり残したこと、やりたくないこと、やらなきゃいけないことって明確になるじゃない?それでその半年って多分今までと違う生き方になると思うんだ。ちょっと必死になるというか一生懸命になるというか。で、その半年が終わりに近づいてくると「まだ死にたくない」って思うでしょ?で、そのもうすぐ終わりって時に、「やっぱり君はずっと生きててもいいよ」って言われた時の感じが今の僕の人生。」

***

そういえばもう一つの事件の方、燃えたあの日から、もうすぐ一年。
夜風が冷たくなってくると、燃えてしまったテントの中で、火傷を負った顔を氷水で冷やしながら、壁の無くなったテントの中で寒さに凍えながら、もう人様の前に出られない顔になってしまったのではないか、化け物みたいな顔になってしまったのではないか、自分の顔のすべての皮膚がユルユルと動く恐怖の中でそう思ったのを思い出す。

そんなわけで安全運転アンド火の用心、ヨロシクベイベー。


書きながらこの曲を思い出してしまったので、

なんとなく、おまけ。

投稿者 ikeura : 2011年10月 3日 17:11


4 Comments

| Leave a comment

タグに1票!!

タグにもう1票!!

経験者より

はじめまして、記念すべき第1回目の書き込みです。昨日私もトレーニングに行きサウナで、水分を絞り気分良く家に帰ろうと外に出ると、ジムの前の道にハーレー古いFL系の物でした、7~80歳ぐらいのおじいさんの乗るセルシオが接触事故を、していました。
バイクを見るとたいしたことはないのですが、キャブレターが折れてタンクの上にのっていました。バイクの運転手は、右足が変な方向を向いていました、スタイルヘルメットは、ジェットヘルにチョイノリスタイルのラフな格好でした。
偏見を、かうかもしれませんが、私も以前バイクで出会いがしらに車と接触事故を、した事がありますから普段からパット付きのジャンバーに膝パット使用です。ハーレーのり方はヘルメットは半キャップ&帽子の方が多いのですが、転倒し時の事を考えているのか、疑問に思います、自分の体は自分で守るしかないですから・・・・・明日は吾身です。

これは個人的な見解ですが、どのようなヘルメットを使用するかに関しては、クルマでシートベルトを着用しているかどうかと同じくらいの重要性だと思っています。事故に遭った時に結果は大きく変わるのでしょうね。

違う視点で見ると事故で死ぬ確率は生活習慣病で死ぬ確率の 1/20 に過ぎません。ということは半ヘルよりも中性脂肪の方がよっぽど危険と言う事になりますね(笑

コメント

本文に関連する事なら、どなたでもコメントを付けることができます。お気軽にどうぞ。
掲示板や、ツーリングの告知などは BH:ANNEX をご利用ください。

もしあなたがロードキングにお乗りなら、是非 FLHR:DB にも登録してください。
ロードキングでなければ、HD:DB に登録しませんか?

該当すると思われる項目を採点して下さい。

総合: 星1つ星2つ星3つ星4つ星5つ  写真:  星1つ星2つ星3つ星4つ星5つ  文章: 星1つ星2つ星3つ星4つ星5つ

No TrackBacks

  TrackBack:

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...