冒頭の映像は、初めて船上からドローンを飛ばした際に、海に落としそうになった時の模様です。あと少しで海の藻屑になるところでした。このとき船は停船していましたが、潮や風に流されて船は相当に動いていましたし、波で上下動もしていました。これらのことを考慮せず、陸上と同じような感覚で甲板に着陸させようとして失敗してしまったのです。

海上での飛行には、海上特有のテクニックとノウハウが必要です。いまでは頻繁に船上フライトをするようになりましたので、このときの原因と対策を徹底解析してみました。これから挑戦する人のために少しでも役に立てば幸いです。

事前準備その1(設定)

船からドローンを飛ばす際には、必ず機体の設定を変更しておく必要があります。
変更が必要な項目は以下の三つです。

1. RTH の設定をホバリングに変更

リターントゥホーム(RTH)とは、何らかの理由で機体と送信機のリンクが途切れた場合や、機体のバッテリー残量が少なくなった時に、機体が自動的に「離陸した座標に戻って着陸」するという安全機能です。
しかし海上で RTH が発動してしまうと、それはすなわち水没を意味します。離陸した座標に船はもうありませんからね。RTH の設定は必ず「ホバリング」に変更しておきましょう。

2. 最大飛行距離の解除

最大飛行距離とは、機体と送信機の距離が想定以上に離れてしまい、通信が途切れてしまうことを防ぐための安全機能です。しかし、海上に於いてこの設定は非常に危険ですので、必ず「オフ」にしてください。
以前、自らが乗船した航行中の船をアクティブトラック機能を使って追尾していたら、最大飛行距離に達してしまい、それ以上機体が着いてこなくなるという事態に陥りました。これはドローンを離陸させた地点(ホームポイント)から、最大飛行距離で設定された距離を超えて船が移動したために、「それ以上ホームポイントから離れない様に」と発動したものでした。
船は走り続けているのに、突然停止して動かなくなってしまったドローン。画面には「最大飛行距離に達しました」と表示されているので原因は分かりましたが、なかなか設定を解除できない。そうこうしているうちにも機体の姿はどんどん小さくなっていく。この時は船を停船して貰えたので事なきを得ましたが、そうでなければ私はパニックに陥っていたでしょう(前項の「RTHの設定をホバリング」にしていなければ、勝手に元の場所に戻って着水しようとするので更にパニック!)。

3. ランディングプロテクションの解除

後述しますが、船上への着陸はハンドキャッチが基本です。
下向きセンサーをオフにしておくことにより、スムーズなハンドキャッチが可能になります。

事前準備その2(操作)

船上では自動離陸、自動着陸などの操作は危険なので使えません。
必ず手動での離着陸操作を、陸上で練習して覚えておいてください。

MAVIC PRO の場合には、CSC操作をしてモーター始動後、スロットルを上げると離陸します。
逆に着陸の場合はスロットルを下げて着陸させてから、CSC操作でモーターを停止します。

CSC とは左右スティックを中央下向きに操作することを指します。
これはモーターの緊急停止操作なので、飛行中に実施すると墜落します。

離陸

船上でドローンを離陸する場合には、機体を手に持って高く掲げ、水平を保ちながら離陸させると良いでしょう。このとき機体は斜めに飛び立とうとする傾向がありますが、躊躇せずに一気にスロットルを開けてください。

アンカーを降ろしていない限り、船は大抵、潮と風に流されて動き続けています(アンカーを下ろしていても上下動はしていますので注意)。人には止まっている様に感じられても、GPS 座標的には常に移動しています。そのため船上から普通に離陸させてしまうとドローンは斜めに上昇しようとします。実際には真っすぐ離陸しているのですが、船の方が動いているためにそう見えるのです(分かりやすい例として、走っているオープンバスからドローンを離陸させるところを思い浮かべてください。ドローンが後方に向かって飛び立つ様子が容易に想像できるでしょう)。

※ドローンは常に GPS で自身の座標を把握しており、前後左右への移動指示を出さない限り、その座標位置に留まろうとします。高度に関しても同様です。

甲板に機体を置いて離陸させようとすると、手すりやキャビン、周りの人などに激突する可能性があり危険です。また、波で船が上下動している場合、船が沈みこんだタイミングで勝手にスロットルが開く場合もありますから注意が必要です。

着陸

船上から飛ばしたドローンは「ハンドキャッチ」して回収してください。ドローンを甲板などに着陸させることは全くおススメできません。

揺れる船上では、ドローンの挙動は非常に不安定になります。甲板に着陸させてもモーターは止まりませんし、勝手に動いたりもします。海上飛行未経験だった私は、当然のことの様に機体を甲板に着陸させようとして、機体を海に落としかけました。船が動いていることと揺れていることを考慮していなかったのです。

ドローンは足が地面に着いたかどうかだけで着陸を判断しているわけではありません。高度計に依って自身の高度を認識しています。従って船が動いている間はモーターは自動では止まりませんし、波で上下に揺れている場合には、船が沈みこんだタイミングで機体が勝手に再離陸する場合もあります。

さらにドローンが着陸を認識できずにいる間は、機体には GPS 座標上の同じ位置に留まろうとする力も働きます。船が潮や風に流されて移動している場合、足が一旦甲板に着いた後でも機体は横方向に移動しようとします。場合によっては船から勝手に飛び出します。これが冒頭の映像の挙動の原因です。

次にハンドキャッチの方法ですが、陸上でおこなう場合とはまったく方法が異なりますので注意が必要です。陸上でハンドキャッチをする場合には「機体を頭上に移動させてから」降下させますが、船が動き続けている海上でこれをするのは至難の業です。

ではどうするかというと、ドローンを船の風下の「これから船が通過するだろう場所」に予めホバリングさせておき、ドローンの真下に船(人)が入ったところで、機体を降下させてハンドキャッチするのです。

船は潮と風に流されて常に移動していますが、大抵は「一定の方向に一定の速度」で流れていますから、これから通るだろう場所を推測するのは比較的簡単なのです。そうすれば操作は片手(スロットルを下げる)だけで済みますから、あとはタイミングだけに集中すれば良いのです(船が流れる向きと速度は、船長に聞けば教えてもらえます)。

さて、上手くハンドキャッチできたとしても、船体が上下動している場合には、やはりモーターはすぐに止まりません。キャッチ後もドローンは GPS 座標上の同じ位置に留まろうとしますから、再び飛び立つ勢いでドローンのモーターが作動したりします。場合によっては暴走したかの様に感じる場合もあるでしょう。横方向に移動しようとするので腕が斜めに持っていかれますが、怯まず無理矢理に押さえつけてください。そして冷静に送信機の CSC 操作でモーターを強制停止させれば OK です(またはドローンをひっくり返してもモーターは止まります)。

ハンドキャッチ

ハンドキャッチは必ず事前に陸上でマスターしておいてください。陸上で出来ないことが海上で出来るわけがありません。しかし、ハンドキャッチを完全にマスターしてしまうと、草むらでも砂浜でも場所を選ばず自由にドローンを離発着できるようになりますので、後でとても役に立ちます。

ハンドキャッチをするためのコツは、「下向きのセンサーをオフにする」ことです。
MAVIC PRO の場合には、ランディングプロテクションをオフにすれば OK です。

設定画面の「センサー」-「詳細設定」の中に「Landing Protection」があります。
この設定を変更しておかないと、ドローンはなかなか手に近づいてきてくれませんのでキャッチできません。

***

お利口なことをツラツラと書きましたが、テクニックとファントムがあればこんな使い方も出来るみたいです♪

最後に私の撮った動画リンクを載せておきます。
VLOGシリーズ空撮アリはこちら

ちなみに私は、船上よりもバイクの自動追尾撮影の方が得意です ♪

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Category: FISHING ドローン
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バイク乗りです。愛車は2003年式ロードキングと BMW K1600B。ノマドワーカーなので夏は福岡、冬は沖縄に住んでいます。

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