トライアングルで初使用してきたので、忘れないうちに感想を書いておく。
ちなみにライセンス講習の時からずっと使っているのは、APEKS XTX タングステン。恐らく最高峰のレギュレーターで、いままで同じモデルを使っている人を見たことが無い。テクニカルダイビングの技術が詰め込まれているので大深度へ行っても吸い心地が変わることはなく、いつでも陸上にいるかのような呼吸ができる。だから一度も不満を感じたことはない。
そもそもどうしてアトミックなのかというと、与那国でアトミックT3を使っている友人に、「これ吸ったら他の吸えないですよ」と、何かイケナイ葉っぱでも勧められたかのような解説を受けてしまったら、気になり始めてしまったのだ。自身が使っているレギュレーターが最高峰であることに間違いはないが、アトミックT3はそれを凌駕する唯一のレギュレーターであることも知っていた。海外のレビューには「海中でこの2モデルの区別ができる人はいないだろう」などと書かれていたのを見たこともある。
気になってしまうと、自分で試してみなくては気が済まない性格なのは、皆さまご存じの通り。という訳で、「幾らで買えるの?」と、海外のサイトを見回っていたら、この25周年モデルを見つけてしまった。バイク乗りには堪らなく魅力的に見えてしまうこのチタンカラーを見てしまったら、一気に物欲が爆発してしまった。通常モデルの T3 は30万円ちょいだったはずだが、この T25 は2,800ドルだ。海外通販すれば、国内で T3 を購入するのと大差ない値段で買えるはず。と、高を括っていたらドル円相場は円安に10円以上も動いてしまった。それなら国内で安く調達しても大差ないと考え、仕入れ先を探してみた。
まあとにかく手に入れて使ってみた感想ね。1ダイブ目。強烈な違和感。なにかオートマティックなアシストが入っている感じ。これはメルセデスに乗っていた私が、初めてアウディのハンドルを握った時に感じたものとそっくり。自然に振舞っている介入の存在を、ハッキリと感じてしまったあの感じ。国産車からアウディに乗り換えたら高級感しか感じないだろうが、メルセデスとアウディのハンドリングを比べれば明らかに味付けが違うのが分かるというもの。同じように大衆モデルを使っている人がアトミックを吸えば「凄い!吸いやすい!感動!」となるのだろうが、 APEKS から Atomic に乗り換えると、その味付けの違いを感じることができる。私はこれを違和感として認知してしまった訳だ。
ほんの僅かにハンドルを切り始めると、スッと消える抵抗感。あのアウディの過度なアシストに似ている吸い心地。少し吸えば少し、沢山吸えば沢山入ってくる空気。あたかも自分で吸っている様に見せかけて、しっかりアシストが入っているので、吸ったときに抵抗感がない。吸いやすいと思う人もいれば、過度な介入と感じる人もいる。そう考えると、何の感想も浮かばない APEKS は、至極優秀だったのだと気づく。浅くても深くても何も感じない。いつだって陸上にいるような自然な吸い心地。吸う方と吐く方の流量を個別にノブで調整できるから、水中で好みのセッティングを出すこともできる。抵抗感のない軽い吸い心地ながら、自分で吸っている感があるのは、適度な重さのあるメルセデスのハンドリングにやはり似ている。しっかりとアシストは入っている筈だが、そこには自分で運転している感があるのだ。
初めて使った翌日に書いているので、このような感想になっているが、半年とか1年とか使ったあとでは、「これは手放せないベストモデル」とか言って、全然違うレビューになっているかもしれない。とにかくまだ3ダイブしかしていないので結論には至らないが、確かに比類なきレギュレーターなのは理解できた。
さて、気になった点が幾つかある。まずは重量の問題。APEKS に比べるとかなり軽い。Atomic SS1 を同時に導入したので、今回はオクトパスを省略してセッティングしてみた。すると安全停止で浮き気味になった。これは器材重量が軽くなったことに起因すると見ている。500グラムくらいウエイトを増やせば解決するが、せっかく器材が軽くなったのにウエイト積むのでは、少し残念な気がする。500グラムのウエイトなんて船に積んでないから、自前で持って行くしかない。だとすると、トラベル重量の軽量化にはつながらない。
そして最も気になった点。これはエアの消費量が増えたのではないかということ。通常、トライアングルの大深度で数回ダッシュをしても、ダイビング終了時のエアは100を切る程度は残っている。まあフィーバーしすぎて 50 を切ることは確かにあるが、それは稀だ。しかし今回は3本とも 50 近くまで残圧が減っていた。アトミックのホースは、他メーカーのものに比べると明らかに太い。アトミックのレギュレーターが吸いやすいのは「沢山空気を供給しているからではないか?」という疑惑に思い至った。もちろん、あと何回も使用して検証してみる必要はあるが、吸いやすさの原因が空気の過供給ということであれば自分にとっては大問題。ターボを積んでパワーが出る代わりに燃費が悪くなるのと同じ原理で、吸いやすさの代わりにエアが減るというトレードオフを迫られるのであれば、いままでの、自然な吸い心地でエアも減らない APEKS のレギュレーターに分がある。しかし、このアトミック25周年モデルは、メチャクチャ高かったので、簡単に使うのをやめる訳にはいかない。というジレンマが既に発生しているのは言うまでもない。
良いことも書いておこう。まず、軽いセカンドステージ。優秀なスイベルと相まって、装着感が良く、引っ張られる感が全くない(APEKS にもスイベルは付いているが、こちらはセカンドステージ側にしかスイベルが付いていないので、時々邪魔な感じがすることがある)。筐体がコンパクトなので、真下を向いて全力ダッシュなんていうシーンで、水抵抗が減っているのも嬉しい。
それとこれはメリットなのかデメリットなのか分からないが、ちょっと目立ってしまいすぎるキライがある。普段、誰も他人のレギュレーターなんて気にしないものと思っていたが、たった 1日で 2人もの人に「あれ?レギュ変えた?」「それ、高いやつでしょ?」と指摘されてしまった。ドリフトのピックアップ待ちで、前の人のファーストステージを掴む。なんていうシチュエーションでは、このレインボーのチタンカラーは存在感が有りすぎるのかもしれない。
追記
暫く使ってみて、やはりエアの減りが早いことが分かった。アトミックの吸いやすさはホースの太さから見ても分かるように、エアの過給によるものだった。魚群を探してダッシュするエクストリームな自分のダイビングスタイルには見合わないので、このT25は「オクトパス」に格下げとした。きっと世界一ゴージャスなオクトパスだろう。いまは APEKS XTX タングステンのセカンドステージを、アトミックのファーストステージに繋いで使っている。
コメントを書く