2:鹿児島-知覧-出水

  • ロード
  • 開聞岳
  • ナセル
  • 右サイド

昨夜の鹿児島ナイトは、夜の街の男たちの心優しい気遣いによって簡単に堪能することができた。
ホテルのフロントで繁華街の場所を聞き、てくてくとアーケード街まで歩くと客引きのおじさんに捕まった。でも飯がまだなんだよね、と言うと何を食べたいのかと質問攻めにされた。とりあえず鹿児島の旨いもの。それならあの店がいいよと教えてくれる。が、やっぱり連れてってやるよと店の前まで案内してくれた。店内を覗いて空席の確認までしてくれた。ありがとう、おじさん。
その店のカウンターで飲んでいた隣のニイちゃんに、「鹿児島に来たなら何が外せない?」と聞いてみたら「やっぱ白くまでしょ。」と言われた。ああ、あのセブンイレブンで売ってるやつね。鹿児島名物だってケンミンショーか何かで見たわ。
生ビール3杯でほろ酔いになった所で店を出る。最初に声を掛けてきた客引きのおっちゃんに「白くま食べたいんだけど『むじゃき』って店、どこだか知ってる?」えーと、この先の角を曲がってアーケードに入ったら右。いいよ、連れてってちゃる。「今日はもう飲みにはいかないから場所を教えてくれるだけでいいよ?」 いいから、いいから、遠くないから案内しちゃる。
鹿児島の人はなんていい人なんだろう。昼間の軽トラのおっちゃん達といい、誰も彼もが親切だ。
店内で食べると結構な量があると聞いていたのでテイクアウトの白くまをオーダー。おおコレが本物の白くまか!店の前で喜んでいると立ち去ろうとする客引きのおっちゃん。後ろから声を掛けなおして、鹿児島で一番いい店教えてよ。と、言ってみる。ニカッと笑って「いい店あるよ」と、ちょっと得意げに前を歩き始めた。
「こんなことがあったんだけど、みんな親切だよね。」
ハウスボトルの芋焼酎を飲みながら鹿児島弁の女の子にそんな話をすると、
「うーん、そうゆうの、わりと当たり前かな。案内してあげる方が普通だと思う。」
ふうーん。当たり前なのか。いいね、鹿児島。
折角の掛け流しの温泉に、朝もう一度入りたかったし、まだ初日の夜だからということで、その後は早めにホテルに戻った。
しっかり寝たので今日は調子がいい。
鹿児島市から南下中。県道自動車道路緑深一般道
武家屋敷武家屋敷知覧知覧知覧
今日の最初の目的地は知覧。
ここは近くに来たら寄ろうと思っていたところ。なかなか訪れる機会に恵まれなかったが、やっと来ることができた。
鹿児島市からだと指宿スカイラインを使えばあっという間に着くのだが、急いでも仕方ないのでいつものように県道を使って行く事にした。
国道を使って市街地を脱出し、ちょうど良さそうな脇道を見つけて逸れる。さすがに市街地からそれ程離れていないからクルマの数は多いけれど、暫く走るとそれぞれがそれぞれの目的地があるだろう細い路地を曲がって消えていく。幹線道路ではないから、ずっと前を走り続けるクルマなんていない。家が消え、周りに何もなくなる頃、道はただの田舎道になり自分だけの道になる。
そして街を出てまだ間もないのに走り応えのあるワインディングになった。朝からサイコー。
街を出てすぐにいい道になるのは熊本の熊本城脇の道を思い出すが、九州にはそんなところいくらでもあるのかもしれない。
誰も居ない いつもの快適な県道を走っていたら、道路がどんどん綺麗な舗装になってきた。これ県道?という感じだ。少し離れてはいるものの、指宿スカイラインと平行して走っている筈なので景色も感じもなんとなく似ている。これならわざわざお金を出して指宿スカイラインなんて走らなくたっていいじゃないかと思う程だ。
そんな事を考えていたら、その道は勝手に薩摩縦断道路という自動車専用道路になってしまった。こんな高規格な道を走らされてもなぁ。前にも後ろにもクルマの気配すらない。必要なのか?この道。
景色は良いのでボケーっとしながら走っていたら、巨大な黄色い左矢印の看板が出現して途中で一般道に降ろされた。この道路はまだ工事中で自分が降ろされた出口から先はまだ未完成のようだ。
一般道に出ると辺りは一面が茶畑だ。茶畑と言うことは知覧が近いに違いない。この辺でお茶といえば知覧茶だからである。
なんとなく方向だけは正しいのではと思われる方向に走ってきたけれど、突然行く手にT字路の交差点が現れた。
目的地が正面方向にある時のT字路ほどやっかいなものはない。どちらへ行ってよいのか全く分からないからだ。赤信号のT字路。後ろにトラックがいるので降りていって道を聞こうかと思ったけれど、小さな交差点だったからやめた。すぐに信号が変わりそうだったからだ。とりあえず勘で右へ曲がるとすぐに歩道にバイクを停めてサドルバッグから地図を引っ張り出す。現在地を確認すると目的地はすぐそばだった。地図を仕舞って500メートルも走ったら知覧武家屋敷と知覧特攻平和会館の看板が見えてきた。
平和会館の看板を見たら心躍ったが、まだ午前中の早い時間だったので武家屋敷という所へ寄ってみることにした。メインは後でゆっくりと。美味しいものは後で食べる派なのだ。
普段はあまり観光地なんて寄り付かないのだが、もう走り足りない所はない九州。美容室でシャンプーされている時に「洗い足りないところはないですか?」と聞かれて「大丈夫です」というあんな感じ。そんな訳でちょっとのんびりしていこう。
駐車場と書かれた巨大な看板に導かれてバイクを駐車場に停める。出入り口はフリーだが奥に料金所が見える。観光地の何が気に入らないって駐車場でお金を取るのが気に入らない。どうせこれから沢山お金を搾取するんだからクルマくらい只で停めさせてくれればいいのに。まあそうも行かないんだろうけど。
でも今日は気分が良いのでバイクを止めて機嫌よく料金所の小屋を訪ねる。窓口には乗用車300円と書いてある。「バイクもお金いる?」バイクは50円、とおばちゃん。クルマの値段を見て高いなと思った分、ちょっと得したような気になった。気持ち良くお金を払う。「はい、50円。」
武家屋敷と言ったって、何があるのか分からない。とりあえずカメラを持って武家屋敷群こちら、と書いてある方に行ってみる。それにしてもバイクを降りると暑い。
入り口で案内板を見ていると通りの反対側からおばちゃんが飛んできた。ここは観覧料が500円なんですよ。あ、そうなの?はい1000円。ちょっと待っててね、おつり取って来るから。ごめんごめん、本当はこちらが払いに行くのにね。
通りの反対側の売店で観覧料を払うことになっているらしいのだが、多分5人に1人は見落としてしまうだろう。なんてったって通りの反対側だ。だからおばちゃんは僕みたいなオッチョコチョイを優しく見張っていてくれるのだ。
お金を払って歩き始めると生垣の立派な家が並んでいる。文字通り、この並んでいる家が武家屋敷なのだろう。まあ普通の古民家に立派な庭が付いているという感じ。
パンフレットに拠ると観覧できる屋敷は7つ。しかし3つほど屋敷を見たところで汗だくになった。一つ一つの屋敷が結構離れていて結構歩かされるのだ。途中でかき氷の暖簾を見つけて、堪らず氷いちごを頼む。はぁ、涼しい。
かき氷で少し落ち着くと、もう引き返そうかと悩む。でもまだ半分も見ていないしなあ。あと一つだけ見てみよう。
4つ目の屋敷を訪ねてみたが、いままで見た3つの屋敷となんら違いが理解できなかった。違いの分からないオトコ。
もうダメだ、引き返そう。500円の元を取ろうなんて徒労はやめだ。
駐車場に戻り、陽に照らされて熱々になったシートに跨って急いで走り出す。かいた汗が風で吹き飛ぶ。ああ涼しい。
平和会館までの約5分、涼みながら走る。
そしてやっとやってきた知覧特攻平和会館。
ここはいわゆる特攻隊、すなわち爆弾を積んだ飛行機で敵船に突っ込むという決死の作戦に殉じた千人以上の隊員たちの記録だ。
お国のために死んでいった若者達の記録を、アメリカ人の作ったオートバイに乗ってやってきた俺。背中にはなんとかモーターサイクルと英語で刺繍までしてある。アメリカ艦隊に突っ込んでいった彼らがこの姿を見たらどう思うのだろうか。でもこれが、君たちが命を掛けて守った祖国の平和になった未来の姿。
じっくりと展示物を見て回り、今のこの平和な生活はとても尊いものなんだということを再認識。君たちの分まで僕は楽しまなくてはならないし、僕と関わった人たちにささやかでもいいから喜びや幸せを感じて貰えれば最高だ。そんな感じでいいのかな。
平和会館を後にして、しばらく走るともう周りには何もない。あるのは茶畑と海くらいだ。
しかし茶畑と海さえあればバイク乗りには必要十分。茶畑の中の一本道を海に向かって走る。遠くには開聞岳が見える。
緑とブルーのコントラストの中をぼんやりと走る。ああ九州っていいなあ。鹿児島っていいなあ。
行き先が決まっていないので景色の良さそうな方へふらふらと走る。途中の絶景ポイントを見つけて開聞岳とロードキングを写真に収める。
写真を撮っていたら急に腹が減ってきた。しかしここは茶畑。他には何もない。そうだ、枕崎へいこう。あそこなら海鮮丼が食べられる。
国道の一本裏の道を走りながら枕崎を目指す。小さな町だから適当に走っていても大丈夫。建物のある街の気配をする方へ走ればそれでいい。
お魚センターというそのものずばりの観光客向けの建物でいつもの海鮮丼を頼む。この海鮮丼、前にも食べたことがあるけど、旨かったっけなぁ?まったく味が思い出せない。久しぶりに食べてみたらそれなりだった。また三日もすればどんな味だったか忘れてしまうのだろうか。
枕崎枕崎から北上。北上県道県道
田んぼ快走出水田んぼもうすぐ
日本の最南端だけあってやはり暑い。遅い昼飯の後は標高を求めて内陸へ向かうことにした。
地図を見ながら国道を避けてジグザグに北上する。さて俺はどこへ向かえばいいんだろう。また鹿児島市に戻るわけにもいかないから、少し西よりを目指す。
鹿児島市をかすめると、あとは自然と北上するしかなくなる。その先は出水から熊本へ行くか、天草へ渡るか。霧島とか阿蘇へ抜ける手もあるが、最近行った気がするので今回は西を目指そう。
海沿いは以前走っているから涼しい山道を北上する。幹線道路を避けて走るとなかなか行きたい方向へは進まない。右往左往しながら北上していると結構時間が掛かって陽が傾いてきた。
今日中に天草へ渡ろうかとも思ったけれど、そういえば出水にはいい温泉の宿があるのを思い出した。今日はあそこでのんびりしよう。


ルートマップ

この原稿は、帰宅して録画の「秘密のケンミンSHOW」を見ながら書いているのだけれど、
そしたら鹿児島の「唐船峡のそうめん流し」というのをやっていた。
あの暑い鹿児島で冷たいそうめん食べたかったなぁ。
下調べもせずに気分で走るのは楽しいが、こうゆう残念な思いをすることも良くある。

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Category: ツーリング
Tag :

ikeura

バイク乗りです。犬でいうと6歳くらいです。愛車は2003年式ロードキング。東京のIT企業を経営していますが、リアル ノマドワーカーなので夏は福岡、冬は沖縄に住んでいます。バイク雑誌に連載アリ。ツーリング、キャンプが大好き。釣りは100キロ超級のクロマグロだけを追いかけています。動画も撮るので宜しければチャンネル登録もお願いします。

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